
- MHC確立
クラウン系ミニブタ
- 国内唯一のMHC確立大動物(MHC確立クラウン系ミニブタ)
- 免疫応答に重要な役割を果たす遺伝子領域は、主要組織適合性抗原MHC(Major Histocompatibility Complex)と呼ばれ、ヒトのMHCはヒト白血球型抗原HLA(Human Leukocyte Antigen)、ブタのMHCはブタ白血球型抗原SLA(Swine Leukocyte Antigen)と呼ばれています。MHCは非常に多型性に富む抗原で、ウイルスなどの外来抗原侵入や、他者からの臓器移植や組織移植の際に、自己と非自己を認識するために重要な指標となるものです。MHCの違いによって、移植された細胞や組織、臓器に対する拒絶反応の強弱が決まってくるため、移植医療や再生医療の実用化を考える前臨床研究実施の際には非常に重要な役割を果たします。
- クラウン系ミニブタだけが有し、国内で入手可能な他系統の医用ミニブタにはない大きな特徴は、クラウン系ミニブタでは、このSLA抗原をコードするSLA遺伝子群のPCRによる解析と選択的な交配によって、異なるSLA系統を造成し、系統を維持している点です(表1)。前述のようにMHCの違いによって移植された臓器の拒絶反応の程度は異なりますが、MHC確立クラウン系ミニブタを用いた肺移植実験(鹿児島大学医用ミニブタ・先端医療開発研究センター実施)で、SLAが同系統の間で移植を行った場合は、移植した肺が1年以上拒絶されずに体の中で機能を果たしているのに対し、SLAが異なる系統間で移植を行った場合は、約2か月以内に移植された肺が完全に拒絶されてしまうという、全く相反する結果が示され、クラウン系ミニブタMHCの相違は移植実験によっても確認されています。このようなMHC確立という特徴をもつ医用ミニブタは、世界的にみても他には米国のMGHミニブタが存在するのみであり、非常に貴重な実験資源であるといえます。
- SLA遺伝子型既知のミニブタは、移植試験、ヒト疾患モデル動物としての可能性、薬理・薬効試験などへの応用が期待されています。国内の様々な研究施設で、MHC確立クラウン系ミニブタを用いて、移植医療における新しい免疫反応法の評価法や拒絶反応抑制方法の開発、MHC確立クラウン系ミニブタから樹立したiPS細胞を用いた基礎・応用研究など、種々の研究が進められています。

表1.MHC確立クラウン系ミニブタ